あるサッカー選手の悲劇
 2005.7.21(フィクション) upload

トップリーグに在籍していた、あるサッカー選手の顛末をご紹介しよう。彼の名は、八木浩志という。

試合を終え、くたくたになって引き揚げてきた八木は、ロッカールームから聞こえてきた会話に息を呑んだ。

「あいつはどうだ」
「あいつ駄目です。全然走らんし、パス出してもミスるし、もう替えてください」

この会話を聞いていた八木は、ロッカールームに入るのを止め、そのまま帰宅した。

その事件から何日か経ったある日、八木はコーチに呼ばれて、次のように言われた。

「今日から右サイドをやってくれ」

八木は腐った。精彩を欠いたプレーを続けた八木は、1カ月後にはチームを去った。

実は、ロッカールームから聞こえてきた会話は、八木選手のことではなかったのです。しかし、八木選手は自分のことを言われていると思い込みました。その結果、八木選手の心に「自分はチームから期待されていない」という構えが作られました。

このような否定的な心構えで、コーチから「今日から右サイドをやってくれ」という指示を受けると、その言葉に付帯する隠されたメッセージを否定的に勝手に作り上げます。例えば、“レギュラーから外す準備だ”とか“苦手なポジションをやらせて評価を落とそうとしてる”等です。この時点で、「なにくそー」と奮起する選手もいますが、概ね人間関係は悪い方向に進みます。

そもそも、なぜ八木選手はロッカールームの会話を勘違いしたのでしょうか。それは、既にその時点で、八木選手の心の中に例えば、「自分は満足なプレーができていない」という一次的心構えがあったからです。ですから、ロッカールームから聞こえてきた否定的な会話に心が反応し、強力な二次的心構えを作ったのです。私達人間は、「そう思えばますますそうなる」のです。

コルパー様の一次的心構え、すなわち「心構えのタネ」を養成する鍛錬がとても重要です。

もしも八木選手が、自身の一次、二次の心構えをしっかりとメンテナンスしていたなら、コーチに「今日から右サイドをやってくれ」と指示されたときの反応(感情、言動)は、まったく違ったものだったでしょう。



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