ロバを担いだ幼い兄弟
中国の寓話(若干アレンジしています) 2005.7.20 upload

ある村に幼い兄弟が暮らしていました。この兄弟は、真面目で賢い兄弟だと村中の評判でした。ロバは、体が小さいながら耐久力があり、粗食にも耐え、少量の水で生きられることから、多くの家で家畜として飼われていました。

働き者の兄弟は、毎日ロバの世話をして、畑で作った野菜をロバに沢山積んで、町に売りに行きました。

いつものように、町で野菜を全部売った兄弟が、心地良い脱力感を抱きながら家路を帰っていたときの話です。

しばらくすると、一人の旅人とすれ違いました。その旅人は、兄弟たちを見てこう言いました。「なんと要領の悪い兄弟だ、ロバの背が空いてるじゃないか。ロバに何も載せないなら、どちらかが乗ったらいいのに」と。言われてみればその通りです。兄は、自分がロバに乗って、弟に手綱を引かせました。
 
すると、二人目の旅人が近づいてきて、今度はこう言いました。「兄のくせに、幼い弟を歩かせるとは、思いやりの無い奴だ」と。それを恥じた兄は、ロバから降りて、遠慮する弟をロバに乗せ、自分が手綱を引きました。
 
次に、三人目の旅人が来ました。そして、「弟のくせに年上の者を敬う気持ちがないのか!」と言いました。びっくりした弟は、急いでロバから降りました。そして二人は考えました。「そうだ、二人一緒に乗れば誰からも文句を言われないね」。兄弟は、小さなロバの背に乗り、家路を進みました。
 
すると四人目の旅人がやってきました。今度こそ何も言われないだろうと思っていた兄弟に、「小さなロバに二人も乗りおって、ロバがかわいそうだとは思わんのか、動物虐待だ!」と旅人は言い放ちました。兄弟は何がなんだか分からなくなってしまいました。そして、とうとうロバを担いで帰っていきました。

真面目で賢く働き者の幼い兄弟に足りなかったもの、それは「目的」です。そもそも何のためにロバを飼っているのかという、根底の目的が明確になっていませんでした。そして次に、場面での目的です。今此処ではロバをどうしたいのか、はたまた兄弟関係(今日は弟をいたわることを選択するか、兄を敬うことの方を選択するのか)はどうしたいのか、ということです。

人生目的を明確にしましょう。もしも、予想もしなかった問題に直面したときには、この寓話を思い出し、「目的」を即座に決定しましょう。

それにしても、愛すべく兄弟ですね。この日の体験で、兄弟たちの心にはどんな心構えができたのでしょうか。賢い兄弟ですから、きっと明確な目的を確立したことでしょう。



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