サイコシンセシス
2006.6.4 upload

サイコシンセシス(PSYCHOSYNTHESIS:精神統合療法)は、精神科医・心理学者であったロベルト・アサジョーリが創始した心理療法で、1910年にその理論と体系が発表されました。アサジョーリは1888年にイタリアのヴェネツィアに生まれ、フィレンツェで医学学位を取得、その後、スイスのチューリヒでフロイトから精神分析を学びました。1926年には、ローマにサイコシンセシス研究財団を設立し、1974年に亡くなりました。

アサジョーリは、イタリアに初めてフロイトの精神分析を伝えた人です。しかし、クライアントの心の問題を過去に溯って分析するのではなく、未来に意識を向け、肯定的イメージの体験を積み重ねていく未来志向の心理療法を構築しました。それが「サイコシンセシス」です。このノウハウは、現在のイメージトレーニング技法にも応用されています。すなわち、将来の成りたい自分になっている場面をイメージして、それになりきった自分で今を生きるというものです。例えば、「もしもこの問題を乗り越えたとしたら、状況はどのように変化するだろうか?」と、自身にあるいはクライアントに問いかけます。これが「創造的思考法」と呼ばれるものです。

他にも、サイコシンセシスには「脱同一化」という考え方があります。人が否定的になっているときは、自分の感情(過去への後悔や未来への不安、現在の否定的感情など)に純粋本来の自己がどっぷりと浸かっています。この状態を「同一化」と呼びます。逆に「脱同一化」とは、純粋本来の自己が感情から離れて、感情を客観的に観察できる心の状態です。この状態を作ることができれば、感情に呑み込まれることなく、逆にそれをコントロールすることができます。

純粋本来の自己が、身体や感情から脱同一化していくと、ついには個を超えて宇宙意識にまで広がっていきます。この考え方が、アブラハム・マズローの「人間性心理学」(自己実現や自己超越、五段階欲求説などを提唱)と呼応して「トランスパーソナル」(個の枠を超えた時空に意識を拡げて自己向上すること。例えば、死後の世界や母体への回帰、前世にまで戻ったり、あるいは宇宙空間にまでイメージを拡げること)という新たな心理学を創造しました。

ここで紹介した「純粋本来の自己」を本レッスンでは「コアセルフ」と表現しています。サイコシンセシスの要旨は、元来宗教などの分野で解かれてきているものです。アサジョーリは、これらの考え方を脱宗教的な文脈で再構成したとも言えます。



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