先日、東京・浜松町で「第1回 メンタルヘルスケア・ジャパン」が3日間に渡り開催されました。ストレスを溜め込んだアパシー(無気力・無感動)状態の従業員を抱える企業の、苦悩と試行錯誤の様子がよくうかがえる会議でした。
これと同時に開かれた展示会に、弊社の「SSDS−BAC」を出展しました。
「SSDS−BAC」は、速話聴取法を基軸とした能力開発・目標達成プログラムです。
「ストレス診断システム」や「リラクゼーション機器」が立ち並ぶ中、弊社は「能力開発が“抗ストレス力”を高める」と銘打って、「SSDS−BAC」の実演販売をしました。そのときにご購入いただいたユーザー様から、喜びの声が戻り始めました。一部の人とは再会しましたが、明らかに表情も変化してきています。
「能力開発が“抗ストレス力”を高める」のは、なぜだと思いますか?
そもそも、ストレスという言葉は物理学で使われていた表現で、物体に生じる歪みのことです。このストレスという言葉を、生物(植物を含む)に生じる歪みに対して初めて使ったのが、カナダの生理学者ハンス・セリエ博士です。イギリスの雑誌「ネイチャー」に「ストレス学説」として発表したのが1936年のことだそうです。
さて、あなたは自分の心に歪み、すなわちストレスを感じていますか?
感じているなら、どのくらいの強さですか?
人生には、様々なイベント(出来事)があります。例えば、病気、転職、結婚、死別、昇進などです。このようなイベントで、人がどのくらいのストレスを受けるのか、ストレス指数として表したのが、アメリカのホームズらの研究です。それによると、人が被(こうむ)るストレスの大きさは、次のようになります。
「配偶者の死亡」がストレス値100で最大を示します。その他、「離婚」が73、「別居」が65、「拘置所勾留」が63、「病気や怪我」が53、「結婚」が50、「解雇される」が47、「親友の死亡」が37、「引っ越し」が20、「クリスマス」が12、「小さな違反行為」が11などです。
もちろんこの指数は、時代や文化の違い、本人の受け止め方の差などによって変化します。それよりも、ホームズらの考察で重要なのは、「被験者が一定期間に被ったストレス指数の合計値が、発病の有無に大きくかかわっている」ということです。そして例えば、上に挙げたストレス指数でいうと、「小さな違反行為」を10回してしまうと、「配偶者の死亡」で被るストレス値を超えてしまうということです。
繰り返しますが、ルール違反の慣れっこは、違反行為をしてもストレス値はもっと小さいでしょうし、仮面夫婦の「配偶者の死亡」体験も然りです。ここで注目したいのは、「塵も積もれば山となる」、すなわち、ストレス値が小さなイベントでも、その体験回数が多いと“ストレスオーバー”に陥るということです。
これらのストレスを「ライフ・イベント型ストレス」といいますが、他にも、公害や運動、知覚など様々なタイプのストレスが存在します。
前置きが長くなりました。速話聴取法がダイレクトに効くストレスタイプについて、話しを始めましょう。
速話聴取法がダイレクトに効くストレスタイプ、それは「小さな気がかり型ストレス」です。このストレスタイプに陥っている人は、「やらなければならないのに(あるいはやりたいのに)、先延ばしになっていることがある」という項目の指数が高い人です。例えば、「お礼の手紙を出したい」「どこどこに伺いたい」「掃除しなければいけない」「・・・の更新」「誰々との約束」「あれを修理しないといけない」「これを買いたい」等々、ちょっとした気がかりを沢山抱えている人です。
このような“小さな気がかり”も、一つひとつのストレス値は小さくても「塵も積もれば・・・」の公式が当てはまります。ストレスオーバーに陥っているクライアントの多くが、このタイプのストレスに冒されています。また、“小さな気がかり”というのは、潜在意識からの重要なメッセージである場合も多いのです。この“小さな気がかり”を効率よく処理できれば、ストレスを解消できるばかりでなく、チャンスを作り、掴み取ることができるのです。
では、「小さな気がかり型ストレス」に陥る理由は何でしょうか。その理由は2つあります。
まず1つ目は、聡明さの欠如です。そのため、行動の優先順位が立てられず、取り組むためのモティベーションも低いのです。聡明とは「ものごとの道理を理解し、判断力が優れていること」という意味です。「小さな気がかり型ストレス」に陥る人は、この聡明さが足りません。そのため、ただ闇雲に生きて、小さな気がかりを溜め込んでしまうのです。
人生の聡明力を開発するためにまずやるべきことは、自分の人生目的を知ることです。そして、人生目的に裏打ちされた目標を設定し、行動計画を立てることです。これを実行すると、様々に直面するものごとの道理がよく分かるし、適切な判断がすぐに下せるようになるのです。
「小さな気がかり型ストレス」に陥る理由の2つ目は、処理スピードの欠如です。そのため、スケジュールがこなせずに、やるべきことが溜まってしまうのです。処理スピードを高めるためには、司令塔である頭脳の活性化が不可欠です。これが実現できると、時の流れに負けない思考速度と実行速度が得られます。頭脳は、何歳になっても練り直すことができます。この頭脳の柔軟性を“可塑性”といいます。さらに、頭脳は、一点を活性化させるとその活性が全脳に波及します。この波及効率の最も高いポイントの一つが言語中枢なのです。
「SSDS−BAC」には、この2つ、すなわち「聡明力」と「処理能力」を高めるための実践ノウハウがシンプルに凝縮されています。そのため、「SSDS−BAC」の実践者は、抗ストレス力(ストレス耐性)が高まり、「小さな気がかり型ストレス」から解放され、充実の人生を獲得するのです。
アパシー(無気力)は、「どうせやっても無理だ」という無力感から生まれます。
あなた自身が「職場などの環境に対して、自分の意図を及ぼすことができる」という自信を取り戻したとき、セリエが言った“適度なストレスは、人生のスパイスである”を実感するようになるのです。 |