「頭脳の果て」〈ウィン・ウェンガー/リチャード・ポー共著 田中孝顕訳 騎虎書房(現:きこ書房)発行〉によると、1秒間に顕在意識は126ビット、潜在意識は1000万ビットの情報処理能力を有するとあります。(ビットとは2進数の桁を表す単位です。例えば、4ビットは16種類、8ビットは256種類、10ビットは1024種類を区別することができます。すなわち情報量を表しています) なんと、顕在意識と潜在意識では、情報処理速度に8万倍もの差があるというのです。これは、私の想像を超えるものでした。というのも、平成10年にこの本が出版されたとき、ちょっとした誤植があったんです。
要約すると、顕在意識の処理能力=126ビット 潜在意識の処理能力=10万ビット よって、潜在意識は顕在意識より8万倍速い情報処理能力を持つ、とあったのです。
でも、10万を126で割ると約800です。騎虎書房の担当者に「これ計算が間違ってるんじゃない。800でしょ?」と言うと、担当者は原著を持ってきて「ワーッどうしよう。10万じゃなくて1000万だ!」と発したのです。なんと潜在意識の処理速度の方が誤植だったのです。参りました、800倍なら想像の範囲内だったのですが8万倍とは・・・。どのような実験・観察・計算でこの数字が導き出されたのかは紹介されていません。よって、データをそのまま鵜呑みにするつもりもありませんが、「潜在意識が圧倒的に速い」ということだけは確かです。
また、この書籍によると「顕在意識が処理できる言葉の情報量は、1秒間に40ビット」と記載されています。前号でお話ししたとおり、特にトレーニングをしていない方が聴き取れる話速は3倍速弱までです。私は、この速度が40ビットで聴き取れる限界だと考えています。
しかし、速話聴取を繰り返すと、ほぼ確実に3倍速以上の音声も聴き取れるようになってきます。聴き取れなかった速度が聴き取れるということは、それだけ頭の回転が速くなった(ビット数が増えた)ということです。このことを別の言葉で表現すると、“顕在意識の知覚バイブレーションがきめ細かくなった”となります。
速話聴取が頭脳を活性化する有効な手段であることが、今、科学的に実証されつつあります。知覚バイブレーション(頭の回転速度)の違いは、各々が体験する事象の認識に大きな差をもたらします。「相手の言動」「自分を取り巻く環境」「不可抗力」などの事象を正確に見極めて判断・言動するためには、きめ細かな知覚バイブレーションを持っていた方が有利であることは言うまでもありません。 |