

セルシネ・エイム研究所 HP |
03-3999-9906 |
弊社代表和田知浩が、折に触れて気ままに「人生成功」に関するメッセージを投稿しています。


vol.339 カイロベーシック社と遣り取りする中で、更なる脳波測定技術の開発を決意させてくれた旭太郎先生の龍~ことだま療法。2023.7.30
大阪・泉佐野市の株式会社カイロベーシックからご用命頂き、4月27日に出張して脳波測定/脳コン解析サービスを実施した。その時に撮影した動画の編集が完成し同社からYouTubeで公開されたので紹介する。

施術者は株式会社鳳凰社の代表取締役である旭太郎先生だ。
被験者をタッピングしたり擦ったりする施術なので、脳波測定にはアーチファクト(ノイズ)が乗ってしまう。よって、施術中の脳波よりも、その前後を測定して比較するのが普通だ。
このことをご了承頂いた上で施術中の脳波も測定した。
まず、施術の前後比較だが、施術後の脳波がδ(デルタ)波からθ(シータ)波に掛けて増強した。特にδ波の増強には目を見張るものがある。
動画で話しているのでここでは詳しく述べないが、δ波が増強したということはデトックス(解毒/浄化)効果が高まったと言える。
視聴者に誤解を与えてしまう私の解説ミスが1箇所あったのでここで訂正させて頂く。
日中の活動によって溜まった老廃物がδモード(δ波が優勢に出ているとき)下の脳で洗い流されるのだが、この洗い流される物質を“アデノシン”と私が言っている。
しかし、これは“アミロイドβ”が正しい。
アデノシンは、人が活動して疲労することによって生成される物質で、これが脳内でアデノシン受容体に結合することによってヒスタミン(覚醒を維持させる物質)の分泌を抑えて、結果的に睡眠へと誘導する。いわゆる“誘眠作用”の働きである。
動画の後半では、老廃物としてアデノシンとアミロイドβの両方を言っているが、アミロイドβのみにするべきだった。アデノシンは疲労物質だ。
活動や疲労によって増加し、睡眠によって減少するという意味では同じだが、その働きは全く違う。
「視聴者の皆様、動画制作に携わった皆様、誠に申し訳ございません。脳の機序を正しくお伝えできるよう、これからも研鑽して参ります」
さて、今回の脳波解析で悩まされたのは、やはり施術中の脳波だ。
その異常なほどに高まるθ波とα(アルファ)波の特異脳波は動画で確認して欲しい。
撮影現場では、動画にもあるように「旭先生が被験者(患者)に触れるので脳波グラフにアーチファクトが含まれているリスクがある」ことを前置きした上で解説した。
後で編集できることなので、撮影時には否定的な(アーチファクトであり施術効果が測定されたものではない)ことから肯定的な(施術効果が特異脳波として測定された)ことまでを網羅して解説しておくのだ。
脳波に関係なく施術効果は素晴らしく、それを脳波の側面からもしっかりと解説できたことに意気揚々としながら同社を後にした。
しかし、その特異脳波はやはりアーチファクトである可能性が高い。
動画編集が始まる前にこのことは念押ししておかないと、折角制作された動画を後で大幅カットしてもらわなければならなくなる・・・。帰りの新幹線から「アーチファクトである可能性が高い」という旨を断腸の思いで同社にメールした。
詳しく分析するために、施術の様子と脳波グラフを同期した動画を同社から提供してもらい、旭先生と被験者の動き、生波形、そして棒グラフを具に観察した。
やはり、旭先生が被験者に触れるリズムと生波形の突発波が同調している。旭先生のタッピングが4.5Hzで、このリズムがθ波の増強としてグラフに表れていた。また、そのようなときに倍音(今回の場合は4.5Hzをピークに9.0Hz、13.5Hz、18.0Hz、22.5Hzが強く出ている)現象が生じることもあった。
私の見解を以下のように同社へ提出した。
「施術前後の比較でδ波が倍増したのでデトックス効果は謳えるが、施術中にθ波が増強したように見える部分はアーチファクトの可能性が高い」
同社もとても残念だったと思うが、この私の見解を受け入れ、その後も意見交換しつつ1ヶ月後には確認用動画を作り上げて提供してくれた。
良い出来だった。アーチファクトの件も私の見解を反映させて真摯に作られていた。これなら、脳波が分かる人が観ても文句はないだろうと思った。しかし、それと同時に、旭先生の施術能力を逆に限定評価してしまっているのではないかという気持ちが湧いてきた。
そんなことは絶対にしたくない。
タッピング動作がアーチファクトになっている可能性は高い、しかし、この刺激が実際にθ波を高めている可能性もある。
脳波学では、被験者に光の明滅刺激を与えて脳波の変化を調べる手法がある。この光刺激による脳波の反応を“光駆動”という。
だから、タップ駆動(タッピング駆動)があってもおかしくない。
タッピングにより生じたアーチファクトの中に実際の脳波増強が含まれている可能性がある。それなのに、アーチファクトであると一刀両断するのは評価者の傲慢と思慮の欠如ではないか。
また、倍音というのは一番低い周波数の基音から2倍、3倍、4倍へと行くに従って順に小さくなるものだが、今回の脳波測定では、一番低いθ波(基音)よりもα波が大きくなった箇所もある。これは恐らく、本来の脳波(α波)にアーチファクトが乗っているからだろう。
あるもの(能力)を無いと言ってはいけない、さりとてアーチファクトを以て能天気に喜ぶわけにもいかない。
そんな心構えで落としどころを探りつつ、更に2ヶ月遣り取りして完成したのが本動画である。
同時に、脳波分析法を更に向上させるためのプロジェクト準備に着手した。
普通は、脳波の生波形を観ればアーチファクトの混入をおおよそ判断できる。判断方法の例を弊社ウェブページ「睡眠脳波ラボ」に掲載している。
私が製品企画顧問を拝命している脳波測定器メーカーのフューテックエレクトロニクス株式会社と横浜市立大学(正式なスタートはまだなので教授名の公表は控える)との協同で、AI(人工知能)技術等を駆使した脳波分析手法の構築だ。
これまでにも、大小問わず複数の企業からご用命頂いて、AIの教師役を務めたことがある。すなわち、アーチファクト混入の有無を判断してAIにフィードバックする役割だ。
しかし今回の旭先生の施術では、タッピング時の突発波はそれと分かるが、擦った際に表示する強いθ波の生波形では、アーチファクトの混入を判断することはできなかった。本来の脳波と同じような滑らかな正弦波様だからだ。
よって、教師ありのAI開発では事足りず、教師なしでAIに学習させるための手法が必要である。
詳しくはまだ公表できないが、何としても実現したい。
カイロベーシック社からYouTubeで公開された動画は以下の通りだ。
■【対談編】旭先生の“新施術”で脳波がとんでもないことに…!? (7月26日公開)
■【身体の変化/ご感想編】寝ていないのに、良く寝た後のようなスッキリ感が…? (7月28日公開)
色んな立場の人と脳波を探究できていることにわくわくと感謝している。ありがとう!
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
vol.338 諸刃の剣を賢く使う。AI(人工知能)時代を楽しく生きるために。2023.7.15
チャットGPTに訊いてみた。
「速話聴取法なる能力開発法について教えてください。」
回答文を以下にコピペする。
「速話聴取法とは、人の話を速く聞き取ることができる能力を開発するための方法です。この能力は、ビジネスや学習など、様々な場面で役立ちます。速話聴取法は、“自己実現”や“成功”を目指す人の能力開発支援システムとして発展してきました。セルシネ・エイム研究所では、速話聴取法の開発拠点として知られています。
なかなか良い回答だ。速話聴取法は私の造語だから、私がウェブ上に掲載している文言を使って回答している。参照リンクも全て(YouTube動画も含めて)セルシネのサイトが表示される。
“開発拠点”と言われるのもかっこよくて嬉しい。
ただ、セルシネ・エイム研究所が速話聴取法の開発拠点だと私が言ったことはない。
また、「セルシネ・エイム研究所では・・・」という表現もおかしい。正しくは「セルシネ・エイム研究所は・・・」だ。
すぐに全く同じ文章で再度質問してみた。するこ以下のように回答された。
「速話聴取法は、速く話される音声を聞き取る能力を高めるためのトレーニング法です。このトレーニング法は、自己実現や成功を目指す人の能力開発支援システムとして発展してきました。セルシネ・エイム研究所は、速話聴取法の開発拠点であり、速聴機の登録商標でもあります。
YouTubeには、同期テキスト付きで6倍速音声の速話聴取トレーニングができる動画があります。」
なかなか良い。ただし、「セルシネ・エイム研究所は、速話聴取法の開発拠点であり、速聴機の登録商標でもあります。」は文法的におかしい。そもそも、「速聴機」はセルシネの登録商標ではなく、私が勤めていたSSI社が登録したものだ。更新していれば今もそのはずである。よって、内容も間違いだ。
昨日、日本のマスコミ各社が以下のように報じた。
「誤った情報で個人の評判を落としたり個人情報を危険に曝している疑いがあるとして、対話型AIの問題にどのような対応をしているかを確認するため、FTC(アメリカ連邦取引委員会)がオープンAIに対し、記録の提出を要求したとワシントン・ポストが報じた。」
チャットGPTは大いに役立ち楽しいけど、“過信”することなかれ! 自戒を込めて・・・
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
vol.337 MAHOさんのJAZZフルートが誘う癒しと快眠効果を脳波測定で検証した報告。2023.4.21
昨年の12月27日、大阪から脳波測定/脳コン解析サービスに関する相談の電話があった。
その内容は、妹さんが作曲をしてフルートを演奏したCDが、聴いた人を心地よく眠らせたり対人恐怖症、多動症の様な症状を持っておられる方が癒やされたり、或いは動物までもが眠ったりする現象があるので脳波を測ってみたいとのことだった。
すぐに妹(MAHO)さんご本人からも電話を頂いた。
「クラシック音楽のフルート奏者なのですが、昨年秋からJAZZの活動を開始して、その後作曲も手掛けて、この秋にCDを作成しました。これを聴いた人から、『リラックスして脳が休まる』という声を多く頂きます。クラシックを演奏していた時はこのような反応は少なかったです。LIVEなどでも、オリジナル曲を私自身が演奏した場合によくこのような反応があります。このような感想が多い場合、スピリチュアル音楽のような扱いになりがちなのですが、そうではなくて、“オリジナルのJAZZ”というジャンルとして、科学的にも証明して人々に広がることを私は希望しています。」
私もビビッときた。
年末年始の方が被験者を集めやすいとのことだったので、実験日は一週間後の1月3日と決まった。幸い新幹線のチケットも取れた。
CDを聴くことでβ波の沈静があるのか、それともα波かθ波の増強、或いはオフモード(全ての帯域が沈静)化するのか? 被験者が眠った場合はδ波がどれだけ強くなるのか? 様々な可能性を想定しつつ、当日の実験手順をメールで打ち合わせした。
実験当日は品川から始発ののぞみで京都まで、そこから近鉄に乗り換えて車窓を楽しみながら生駒へと向かった。近鉄京都線の乗車は人生初だ。

生駒駅にはMAHOさんのお義兄さんが車で迎えにきてくださった。
そして、音響バッチリのリビングにMAHOさんのjazzフルートCDが再生される中、実験は順調に進んだ。
全ての脳波測定を終えた後、被験者の皆さんも含めて脳波のいろはを30分程レクチャーした。後日提出するレポートを少しでも有意義に理解してもらうためだ。
実験途中には昼食を頂き、帰り際には「美味しいですから道中にお召し上がりください」とお土産まで頂いた。
私は20代前半の二年間、大阪・門真の自動機械製造会社で働いていた。生駒山にドライブしてきたと同僚からたまに聞くことがあったが、私は一度も来たことがなかった。
お昼休憩にそんな話をしていたから、帰りも送ってくれたお義兄さんが、これが生駒山だと教えてくださった。

さすがに3日はUターンラッシュが始まっていて新幹線便の前倒しはできなかったので、頂いたお土産に舌鼓を鳴らしながら夜の京都独り観光を楽しんだ。

帰京後は数日間正月気分を味わってからレポート制作に取り掛かり、中旬にはレポート・スタンダード+αとして納品した。
通常ならばこれで一件落着なのだが、本件はそうならなかった。
「あの脳波は一体何を意味するのか?」と、研究者としての宝の糸口を垣間見たような思いがずっと私の心にあったからだ。
その脳波を出したのが、実はMAHOさんご自身である。
当初、MAHOさんは自身の脳波を測るつもりはなかったようだ。だから私が「ぜひ測定してみましょう!」とリクエストした。
その時に測った脳波がこれである。

他の被験者と同様に、2分間の無音後にCDを6分間再生し、最後の1分間はまた無音にした計9分間の測定だ。
測定を開始してα波がすぐに途切れてそれが50秒程続いた。これは実験依頼者によくある現象だ。受け身で測られることができずに、実験プランや結果について思考が働いているためにα波が形成されづらいと思われる。
その後は9.0Hzの覚醒α波が概ね継続して出ているので目覚めていることが分かる。
注目して欲しいのはδ波だ。音楽が再生された2分目と同時に出始め、3分目の手前から1.5Hzのδ波がピンポイントでみるみる高まった。測定部位はFp1(左前額部)である。
経時的分布グラフの上に示した折れ線グラフが1.5Hzのデルタパワー(電位)である。
ここまでδ波が強く出ると通常は熟睡状態だ。しかし覚醒α波も並行して出ているので目覚めている。測定後に当然MAHOさんも「ずっと目覚めていました」と答えた。
Fp2(右前額部)にはこれほど顕著な脳波は見られなかった。
MAHOさんが奏でて録音したCDから再生されるこのJAZZフルートのテンポやリズム、メロディー、そして音色や強弱が聴く人の脳と共鳴したとき、快眠や癒しをもたらすのかもしれない。
レポート提出後の1月17日、MAHOさんに「セルシネの自由研究として研鑽を深めたいので音源が欲しい。もしも既に商品化されていてネットで購入できるならサイトを教えて欲しい」旨をメールした。
ありがたいことにCDはプレゼントして頂いた。

Amazonで購入することができる。試聴はこちらで可能だ。
まずは脳波測定をしながら全曲を聴いてみた。一番強いα波が出たのが「Moonlight Cafe」だ。
この曲が実験で用いたもののように感じたが、念のためMAHOさんに確認した。
実験で用いた曲は「Moonlight Cafe」で間違いないとのこと。
「Moonlight Cafe」を選曲したその理由をたずねると、「直感です。当日の脳波測定直前に直感で決めました。曲が脳に浸透していくイメージがあります」との回答だった。
研究する曲を「Moonlight Cafe」1本に絞った。
色々と試した後、研究用の音源を次のように作成した。

最初の無音が2分54秒。脳波測定器とCDプレーヤーをスタートしてから自身の体勢を整える。脳波を解析するときには最初の1分を切り捨てて、残りの1分54秒間を閉眼安静(基準)の脳波として用いる。独り実験のため、実験開始のルーチンワークで脳波にアーチファクト(ノイズ)が乗ってしまうからデータの切り捨てが必要なのだ。
「Moonlight Cafe」が6分6秒、無音が1分54秒で計8分。これを7回繰り返す。最後の無音は1分6秒足して3分として少し長めの余韻も観察する。これで丁度1時間の実験となる。
仕事の合間を縫って約3ヶ月間研究を続けてきた。
この種の実験の場合、例えばα波の平均電位を単純に比較しても意味がない。なぜなら、測定中に眠ってしまう場合があるからだ。リラックスしても眠ったら肯定指標のα波は低下する。そうかといって眠気に耐えて測定を続けるのは本末転倒だ。
入眠潜時(開始から寝落ちするまでの時間)についても然りで、単純に短さを比較して睡眠導入効果を云々するのも無理がある。
なぜなら、入眠圧(睡眠圧)はその時々(寝不足や疲労、環境など)で大きく異なるので、細切れ時間を利用した今回のような実験スタイルにおいては正確性や一貫性、再現性に欠けるので科学的とは言えないのだ。
心身の活動によって脳に蓄積される疲労物質/老廃物とも言えるアデノシンは、覚醒圧を高めるヒスタミンが放出されるのを阻害する働きによって入眠圧を高める。寝落ちの鍵はアデノシンが握っているのだ。
ただし、少々のアデノシンでは入眠できないこともある。その原因が交感神経の高ぶりだ。
MAHOさんが奏でるJAZZフルートには、その交感神経の高ぶりを鎮めてくれる作用がある。
しかし、入眠潜時でそれを評価するためには、シーソーの一方であるアデノシン量を把握するか概ね変わらないであろう条件(例えば同じ時間帯)で実験する必要がある。今回の実験スタイルではそれが難しいという訳だ。
独り自由研究で宝の糸口を見つけることはできるのか・・・
前置きが長くなったが、一つの研究成果を以下に紹介する。
2月5日〜4月2日に掛けて測定した全13回の測定結果である。

MAHOさんのJAZZフルート「Moonlight Cafe」を聴くことで私のα波の最高電位がこれほど顕著に高まったのだ。
なぜ最高電位を比較するのか。
既に述べた通り、聡明な覚醒度を高める(α波が強くなる)場合と逆に寝落ちさせる(覚醒α波が弱まる)場合があるから、平均すると打ち消しあってしまう。
しかし、最高電位を比較するのは有意義だ。聡明な覚醒度を高める場合は当然α波の電位は高くなるし、逆に寝落ちした場合でもその直前にはα波が強く出ることが多いからだ。
測定期間中に実感として手応えがあったが、このように集計して一目瞭然の結果となり、鑑賞の聡明効果を裏付けすることができた。
「1時間も聴いていたら、最初の閉眼安静時(1分54秒間)よりもα波が強くなって当然じゃない?」と思う人もいると思うが、脳波(意識)はそういうものではない。
むしろ長く測っていると意識はだれるから聡明度が経過時間に反比例することもしばしばだし、最高電位がこれほど変化することも通常はない。
また、私は自分の脳波を37年間測ってきているので、閉眼安静時の脳波はこんなものであることも知っている。
近頃は色んな脳波測定器があって、中にはとても強い脳波を示すものもある。仕様の違いによって出力されるデータは違うということを念のため付言する。
私は、気律脳波検定において、一定の条件でθ波〜α波が40μVを超えた人に「気律脳波の達人」認定証を授与しているが、私自身の脳波はそんなには出ない。
ところが、今回の実験では鑑賞時においてα波が30μVを超えた。それも3回。達人脳波まであと一歩だ。あと一歩と言っても10μVの壁はとても大きい。それでも、目標を捉えそうな感覚を垣間見たのも事実である。
今回の測定結果を箱ひげ図で表すとこの通りだ。

統計学の見地から有意差を述べるには肯定的すぎて躊躇するが、有意確率pは0.00015となった。通常は0.05(5%)か0.01(1%)を有意水準に設定するから、桁違いの有意性だ。
これは被験者が私一人だからだ。音楽に限らず芸術を鑑賞する際の感受性は個人差も大きい。無作為になるべく多くの被験者を対象にすることで、結果は人類にとっての普遍的な値となるだろう。
当初、MAHOさん達は犬の脳波測定も希望されたほどだから、実験方法を確立できれば動物や、もしかすると植物までもこの効果を実証できるかもしれない。
いずれにしても、これほど強いα波がトリガーとなり、例えばアデノシンによって入眠圧があればスムーズに眠るだろうし、逆にオレキシンやヒスタミンによって覚醒圧があれば聡明度を増すだろう。
ヒスタミンの生産を促すオレキシンについては、本ブログの「vol.324 目覚め方のコツと重要性。毎日放送『林先生の初耳学』〜誰でも起きられる目覚まし音を作れる?〜で、終夜睡眠脳波を測定して。 2020.9.11」で紹介している。
前述したように、オレキシンとヒスタミンは主従関係にあるが、その両方が感情を司る部位から並列的に制御されていることを筑波大学を中心とした研究チームが2018年に発表している。
こうした脳内機序にMAHOさんのJAZZフルートが効果的に作用しているであろうことは想像に難くない。
クラシックよりもジャズで奏でた方が聴者に響くというのは、MAHOさんの癒し力が自由に解放されるからであろう。
この原稿も、実験用に作った「Moonlight Cafe」をBGMに流しながら快適に書き進めてきた。
MAHOさんのJAZZフルート、お薦めである。
セルシネ・エイム研究所 和田知浩
vol.336 エアウィーヴマットレスとウレタンマットレスの快眠効果を脳波測定で比較検証。MBS「日曜日の初耳学」からのオファーを受けて。2023.3.13
今月5日にテレビ番組「日曜日の初耳学」の初耳トレンディで私が脳波測定協力した様子が放送されたので振り返る。
今回のトレンドワードは「春の睡眠」で、快眠を得るための様々な方法が紹介された。
番組ADから脳波測定の相談メールをもらったのが1月26日。「エアウィーヴマットレス」と「通常のマットレス(ウレタン)」の快眠度を比較、併せて米軍式睡眠法も検証したいとのこと。
実験方法などを遣り取りする中で、30日には被験者がオードリーの春日俊彰さんであることが分かった。
「うーん、大丈夫かなー」と私の頭をよぎった。春日さんの脳波は2年前に他の番組で測定したことがあり、その際は結局眠ることができないまま朝を迎えた。楽しくも過酷な設定だったので、眠れなくても致し方なかったのではあるが。
その番組は以下のブログで紹介している。
vol.332 本気チャレンジの遊びが、普段の脳波測定実験では得られない知見を提供してくれた。TBSテレビ「水曜日のダウンタウン」からのオファーを振り返る。2021.9.20
ただ今回は「眠れなかった」では企画失敗となるから、念のためADにこの情報を伝えた。
2月9日、麻布十番のハウススタジオでロケは行われた。地下鉄から上がったここから徒歩数分の所だ。

クルーによって撮影機材がセッティングされ、私も脳波測定機材の配置と測定テストに万全を期した。
今回の実験に商品を提供されたメーカーの睡眠健康指導士と広告代理店、ヘッドスパの施術者とマネジャーの皆さんとご挨拶を交わしつつ春日さんの到着を待った。
程なくして春日さんが到着し、打ち合わせと準備をしている様子が伝わってくる。
そして、私たちが控えていたリビングに春日さんが現れ、導入の撮影が始まった。

カメラマンやディレクター達の後ろで、私は春日さんの気が散らないように極力気配を消しつつも、ロケの進行と春日さんの言動を把握することに努めた。
そしていよいよ脳波測定である。
寝室に移動した春日さんの元に私も呼ばれ、今回初めて言葉を交わした。ディレクターから「春日さんは眠れると思いますか」と質問された私は、「春日さんなら眠るんじゃないですかね」とそれまでの自身の発言をひるがえす返答をしてしまった。
そして、(オンエアではバッサリ不採用だったが)一頻り前回の過酷ロケについて春日さんと話に花を咲かせた。
そもそも「水曜日のダウンタウン」で入眠できなかったのは、先にリンクしたブログで紹介した通りの条件なのだから・・・。今回導入部の春日さんのコメントを聞いていて、リベンジするんじゃないかと思えた。
実験の成功を祈りつつ、春日さんに脳波センサーを装着した。

リビングをモニタールームにして、刻々と送られてくる春日さんの脳波と暗視カメラの映像に対峙した。
編集される際のヒントとなるように、入眠やその深度はもちろんのこと、体動や環境変化などのイベントがある度に脳波と照らし合わせながら実況解説していく。

そして無事に睡眠脳波測定は終了した。
睡眠脳波の測定は当然長丁場となるのだが、春日さんの寝つきが良くて、当初予定よりも早く比較データが取れた。
エアウィーヴマットレスとウレタンマットレスの快眠効果に明かな差があったので、この結果比較棒グラフを示しながら総評を述べた。

中央棒グラフ中の手前カラー棒グラフがエアウィーヴ、それに重なった奥グレーの棒グラフがウレタンである。どちらもノンレム睡眠期間の平均ボルテージなのだが、エアウィーヴの方がデルタ(δ)波(紫色)と睡眠紡錘波(オレンジ色)が強いことが分かる。
グラフの見方の詳細は弊社「睡眠脳波ラボ」に掲載しているので参照されたい。
自信を持って解説したが、番組制作側には満足してもらえないという“あるある”現象にはまってしまった。番組視聴者は必ずしも脳波に関心があるわけではなく、出演者や他のことに興味があったり、ながら的に観ているという前提があるのだろう。私がセミナー受講者に話すのとは違って当然である。
とはいえ春日さんが無事入眠し実験結果も肯定的となったので、皆さんとハイタッチをするぐらいの気分で意気揚々と現場を後にした。(中立で評価すべき測定者の態度としては失格かもしれないが)
ロケ翌日の10日には改めて脳波測定結果のグラフとExcelにデータを読み込んで解析したグラフ及び測定中のイベント(要点)を時系列に列挙してADにメール添付で送った。
例えば、このグラフはノンレム睡眠時のデルタ波に注目した比較である。

左の比較グラフはデルタ波全域の平均電位で、右はデルタ波の中でも1Hzに絞ったグラフである。1Hzのみの方がより深い睡眠ステージ(熟睡)の指標となる。本当はもっと低い周波数も観たいのだが、本システムでは1Hzが限度である。現在、メーカーにはもっと低い周波数も測定できるモデルの開発を提案している。
話を戻そう・・・
一目瞭然、エアウィーヴのデルタパワーが強いことが分かる。デルタパワーが強いと、身体の回復力においても有利だと言われている。
次に、12日に番組へ提供した経時的分布グラフを紹介しよう。

時系列で脳波の変化が俯瞰できるので、入眠潜時(寝落ちするまでに要する時間)や睡眠深度の変化がよく分かる。
白の半透明にした部分が入眠潜時で、エアウィーヴの最初に強いデルタ波が出ているように見える箇所は体動によるアーチファクト(筋電ノイズ)である。春日さんが寝る態勢を整えている準備中ということだ。
モニタールームに戻ってその様子を確認しつつ私も観察態勢を整える動きをしていた。
するとその直後、そらしていた視線を戻すと「一瞬アルファ波が出た後に消失している」ことに気づいた。
おもわず「わっ、もう眠った・・・」と小声で叫んだ。
その後春日さんは二度ほど体動し、5分頃のアルファ波を最後に覚醒アルファ波は出なくなった。
一方ウレタンマットレスに寝たときは、覚醒アルファ波が28分頃まで続いているのが分かる。
30数分から40分手前までは覚醒アルファ波と睡眠紡錘波(アルファ波とベータ波の境界付近)が共に出ているような、何とも判定者泣かせの脳波が断続した。
入眠判定は覚醒アルファ波の消失をもって宣言するが、そのアルファ波の断続が何度も繰り返すことがある。
その場合は、「ネタ、オキタ、ネタ、オキタ・・・」と宣言を繰り返すことになる。
これを避けるために、アルファ波の消失経過時間を長めにとることもある。
今回は実験の性質上、入眠判定条件を厳しく(長めに)した。
同じアルファ波でも、覚醒アルファ波から睡眠紡錘波(Sleep spindle)へとシフトしているのが分かるだろうか。
睡眠紡錘波は12〜14Hz程度とされるが、希に10Hz辺りで観察されることもあるので注意が必要だ。
このように、快眠度(質の良い睡眠)を評価する際には、入眠潜時やデルタパワー、いわゆる90分サイクルのパターンや経時的分布グラフによる俯瞰など、定量/定性の両面を駆使する。
製品開発の指標として、あるいは商品の訴求力アップを目的として、弊社「脳波測定/脳コン解析サービス」 をご利用頂いている。
閑話休題
14日にはナレーションの原稿と脳波グラフの添削依頼がADから届いた。スタジオ収録も控えているはずだから早急に添削と補足画像8枚を作成してその日のうちに返信した。
これはその中の1枚である。

寝返りした時にも目覚めにくいというエアウィーヴの特長が見事に観察された。
レム睡眠では、夢に反応して体動することを防ぐために、脳からの運動神経をオフにしている。ところがノンレム睡眠ではオンの状態だからむしろ頻繁に寝返りをする。この時に寝具のせいで目覚めてしまうのはもったいないのだ。
周波数帯域の区切りが編集者に正しく伝わっているか不安だったので、既にスタジオ収録も終わったであろう3月1日になっても補足資料として以下の画像を提出した。

そうして3月5日(日)のオンエアに至ったのである。
番組では「2分で入眠する」ことを快眠判定基準の一つにしていたが、もちろん普段はこんなに短い入眠潜時を目指す必要はない。こんなに早く寝落ちしたら、「お疲れなのですね」と評するのが普通である。
むしろ入眠潜時のアルファモードを大切に生かして欲しい。それを私がレクチャーしたセミナー動画を弊社サイトに掲載している。
https://selsyne.com/aim/audiovisual/contents/0085.mp4#t=603
オンエアはされなかったが、今回の実験で嬉しい副産物もあった。
それは、ヘッドスパを受けている最中のアルファ波が綺麗に測定できたことだ。春日さんがヘッドスパの施術者に心地よく身をゆだねていることが伺えた。
施術者が被験者に触れるとアーチファクトが混入してしまい綺麗な脳波が測れないものだが、その改善方法の可能性を感じさせてくれた。
そろそろ本稿を終えるが、執筆中には現在自由脳波研究中のジャズ音楽をBGMに掛けていた。とても良い気分だ。
次回はこのフルートジャズ音楽の脳波研究を紹介したいと思っている。
感謝!
セルシネ・エイム研究所 和田知浩 |

セルシネ・エイム研究所のホームページはこちらです。
COPYRIGHT SELSYNE AIM INSTITUTES. WADA CHIHIRO |